らいたーずのーと2

旅行、自転車、現代美術、食、歴史、文学、哲学など雑多に綴る。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2017 第2ステージ

今回のドーフィネは、自分にとってもたくさんは知らない選手も多いので、彼らがどんなアシストをするのか、解説の辻さんが非常に詳しく説明してくださっているので、それらを参考に備忘録的にまとめる。

 


今日のコースはなんだかんだで結構登る山を含んではおり、そこで一度ピュアスプリンターたちが遅れたようではあったが、それでもそのあとの下りを利用して1つにまとまり、最後は5㎞のひたすらまっすぐな平坦。完全なスプリントステージとなった。
(終盤のカテゴリのない登りでボーラ・ハンスグローエのレオポルド・ケーニッヒが遅れてしまった。長期離脱からの復活だっただけに、まだ調子が戻らないのか? ツールはあくまでもマイカをエースにし、彼はブエルタに照準を合わせるのだと思うので、焦らずじっくりとコンディションを整えていってほしい。今大会は25歳のブッフマンに総合エースを任せてしまおう)

 

 

今日、終始積極的な動きを見せたのがコルブレッリ率いるバーレーンメリダと、ボアッソンハーゲン率いるディメンションデータであった。


ディメンションデータは北のクラシックでも活躍していたイギリス人のスコット・スウェイツが牽引。


バーレーンメリダは、残り3㎞くらいまで新城幸也が全力の牽引を見せ、その後ろにもボルト・ボジッチ、グレガ・ボーレと並んでコルブレッリが控えていた。

 


だが、この日最強のトレインを形成したのはカチューシャ・アルペシンだった。

 


「人間機関車」トニー・マルティンが相変わらず完璧な牽引を行い、その後ろにはモルコフ?ビストラム?どちらかがいて、その背後にツァペル、クリストフの最強コンビ。

 

ラスト500mは勾配4%の登りレイアウトであったが、ここでカチューシャは、ツァペルともう1人のアシストによる他チームを圧倒する牽きで、これはもう、クリストフの圧勝、と思われた。残り300mでまだツァペルが残っていたのだ。

 

だが、このあと、発射されたクリストフがまったく伸びなかった。


その間に、後方で、今年新加入のイタリア人ヤコボ・グアルニエーリがデマールを連れてポジションを上げていく。グアルニエーリは一度ボアッソンハーゲンと押し合いになったものの、しっかりとそれをはねのけて、右側の狭い隙間を突き抜けていった。

 

グアルニエーリはデマールを、集団先頭までひきあげることはできなかった。
だが、今度はデマール自身が、驚異的な加速でもって一気にクリストフを抜き去り、先頭に躍り出た。

 

登りスプリントという、彼にとって得意とするレイアウトで、その力を見せつけた形となった。

 

 


この日は、とにかくグアルニエーリの巧みなアシストとデマールの力が突出していた。アシストたちの力だけでいえばカチューシャが最強だったかもしれないが、エースのクリストフが、カリフォルニアから続く不調から抜け出せずにいた。

 

あとは、サンウェブの若きスプリンター、バウハウスが今日のメンツの中でも5位につける好走を見せてくれた。
同じ登りゴールのノケレ・クルス3位の力がしっかりと発揮できた形だ。そのとき負けた相手であるブアニには、この日も勝てなかったけれど。


期待されていたボアッソンハーゲンはバウハウスにも負ける6位。ちょっとラストのポジションが悪かったかな。

ブリューゲル「バベルの塔」展

行ってきました。

上野の東京都美術館にて。7月2日までやっています。

本当はミュシャ展行く予定だったんだけど、そっちが90分待ちとかいう情報が出回っていて、急遽こっちに。

やっぱり期間の最初と最後のあたりは行くもんじゃないね(ミュシャ展は6月5日まで)。

真ん中くらいの時期が一番いい。

結果、バベルの塔展に来たわけだけど、ミュシャ展行くよりも良かったかもしれない。大好物だった。

ちなみにバベ塔展の方もそれなりの混み具合。本命「バベルの塔」の絵の前は三重くらいの人だかりでベストポジションにつくにはそれなりに待たなければならない。

(時間帯は13時~15時)

 

 

さて、バベルの塔展だが、本命のブリューゲルバベルの塔」はコーナーの一番最後の方にあり、最初は16世紀前半のネーデルラントにおける、イタリア・ルネサンスの影響を受けた写実的な絵画の発展のコーナーから。次に、当時のネーデルラント美術およびブリューゲルに大きな影響を与えたヒエロニムス・ボスの作品と続く。

一番最初が「ネーデルラント彫刻」で、当時の彫刻なんてほとんど見たことがなかったのでこれはこれで新鮮だった。キリストや聖人の像なんだけど、衣服の裾までが丁寧に作られていること、そして基本木彫りなんだけど、彩色することで金属であるかのように見せた、という技術が感嘆モノだった。一部色の残っているモノもあったんだけど、金色とか、本当に金で出来ているように見えた(観覧者の中には「これ金属なんだねー」と勘違いしている人もいたくらい・・・オーク材って書いてあるよ!)

 

そして、本命「バベルの塔」はもちろん凄かった。

バベルの塔は2種類あって、今回来日しているのは後期の方。よりハイ・スケールで塔自体にフォーカスしたもの。

とにかくリアル。幻想をここまで現実的に描いたのは凄い。大好物。

周辺の風景は当時のネーデルラントを参考にしているようだが、彼がその画業前半で身に着けた風景画や船の造形の経験を取り込んでいる。

そして、レンガや漆喰をクレーンで上層に運び上げるシーンが描かれているのだが、その部分だけ赤かったり白かったり・・・一番上がまだレンガの赤が残っているのに下層の方は古びていたりするなど、「今、まさにこの塔を作っている」という現在性・時間の経過を一枚の絵に見事に表現している。

どれだけ眺めていても飽きない絵である(混雑していたので、ちょっと見たらすぐ離れないといけなかったのは残念だったけれども)

 

 

ただバベルの塔は別格だったものの、それ以外ではむしろボスの作品の方に心を惹かれた。

特に印象的だったのが「聖クリストフォロス」。

ボスといえば「樹木人間」に代表されるような奇想的なモンスターの描写で、ブリューゲルもその影響を多分に受けたようだが、この「聖クリストフォロス」は、そこまで奇怪な表現は過剰ではなく絶妙に存在することでより一層絵の不気味さを掻き立てている。

とくに「吊るされた熊」「廃墟の怪物」なんかは、自己主張は弱いけれども、確かな不気味さを見る側に与えてくれる。会場に付された解説もなるほど、と思わせるものだったのでぜひ見てみてほしい。

川を渡る巨人クリストフォロス自体は聖書の話をふまえているだけなので、ボスオリジナルの不思議な存在では決してないはずなのに、この絵の中に含まれると、この巨人の姿ですら奇想なモンスターのように思える。

 

この、あらざるものへの想像力(あるいは象徴への意識)こそがボスの魅力であり、当時のネーデルラント美術界を魅了したものであり、そしてブリューゲルバベルの塔へとつながるものだったのだろうと思う。

 

 

なお、当美術展では大友克洋による「バベルの塔内部」の絵も展示されていた。

さすが・・・細かい描写を書かせたら当代随一の作家・・・「バベルの塔」とデジタル的に融合させた絵であったが、ほとんど違和感がない。

現実に大きな展示絵に顔を近づけて見てこそ、なので、ぜひ会場に足を運んで観てもらいたい。

ツアー・オブ・ノルウェー2017

ジロで盛り上がっている自転車界隈ではあるが、その裏番組(?)としてのツアー・オブ・ノルウェーもなかなかに盛り上がる展開だった。

 

第1ステージは地元ボアッソンハーゲンが勝利。

しかし第2・第4ステージではボアッソンハーゲンが失速し、ともにオランダのフルーネヴェーヘンが勝利。

さらには第3ステージでタイム差をつけてピーター・ウェイニング(ルームポット)が勝利したことで、総合首位にウェイニングがつく形に。

 

 

とはいえ、総合順位では3秒差でゲランスとボアッソンハーゲンが後ろについている状態。ウェイニングではスプリント上位につくことは難しいと思われるため、逃げ切りなどが決まらない限り、このゲランスかボアッソンハーゲンがスプリント勝負で総合を争う、という形式になった。

 

 

しかしここでドラマが生まれる。

ゴールまで12km地点で、道路上の水たまりを避けようとしたのか、ボアッソンハーゲンが落車。

すぐ自転車を交換しようとしたが、自分の体型と合わなかったのか、貰った自転車も、続いてきたチームメートの自転車も受け取ってすぐに交換する、という状況。ようやく2人目のチームメートの自転車に乗って集団に戻ろうとする。

正直、ボアッソンハーゲンの復帰は絶望的。

すでにフルーネヴェーヘンもトラブルで遅れており、ゲランスが優位か、と思われた。

 

 

しかしここで、集団がボアッソンハーゲンを待つことに決める。

地元の英雄であるボアッソンハーゲンに対する、プロトンの敬意の表れか。

もちろん落車で体を痛めているボアッソンハーゲンが完全な状態でスプリント勝負できるかどうかはわからない。

しかしそれでも、最後の勝負には参加はさせる――そんな心意気をプロトンが見せた瞬間だった。

 

 

そして最後のスプリント。

ここで、ボアッソンハーゲンが優勝。ゲランスは2位。

この展開で、まさかのボアッソンハーゲン優勝。

彼は地元最高峰のレースであるこのツアー・オブ・ノルウェーで、4年ぶり3回目の総合優勝を果たした。

おめでとう、ボアッソンハーゲン。

なかなか目立てない彼のこの勝利は嬉しいところだ。

ツアー・オブ・カリフォルニア2017 第1ステージ

サクラメントサクラメント(167.5km)

カリフォルニア州州都サクラメントを舞台にして行われた、ド平坦のスプリントステージ。

逃げは4人。ジェリー・ベリーのベン・ウォルフ(アメリカ、23歳)、ユナイテッド・ヘルスケアのジョナサン・クラーク(オーストラリア、32歳)、ノボ・ノルディスクのシャルル・プラネット(フランス、23歳)、そしてBMCレーシングのフローリス・ヘルツ(オランダ、25歳)である。

 

逃げ切りがほぼ不可能な初日スプリントステージで、下位クラスチームによる逃げといういわば「セオリー外し」の行動をヘルツが獲った理由は、チームスポンサーのタグ・ホイヤーが後援するヤングライダー賞ジャージを何としてでも獲りたかったから、だろう。中間スプリントポイントで1位と2位を獲得してボーナスタイム5秒を得たヘルツは、最終スプリントでトップライダーたちから4秒遅れでゴールし、なんとかギリギリで新人賞ジャージを獲得した。

 

 

トップスプリンターたちの演じる最終スプリント勝負は、前評判通りにマルセル・キッテルが「最強」を誇示する走りを見せた。最強の発射台役ファビオ・サバティーニから撃ち出されたキッテル砲の威力は凄まじく、その後ろに飛びついたペーター・サガンも、一度たりとも彼に並ぶことができないまま2位でゴールした。

 

まるで、2014年までのツールで見せていた彼の強さが、戻ってきたかのようだった。

3位はエリア・ヴィヴィアーニ、4位はジョン・デゲンコルブ。この辺りも、「最強」に一段劣ると思われていた彼らの状態の良さが垣間見える着順だった。BMCレーシングのジャンピエール・ドラッカーも5位と、この面子の中では僥倖とも言える結果となった。

一方で、リック・ツァペルのリードアウトを得たアレクサンダー・クリストフは13位と、イマイチな結果に終わってしまった。未だ、エシュボルン・フランクフルト以外でのワールドツアー勝利のない彼の復活はこのカリフォルニアで見ることはできるのだろうか。

ジロ・ディタリア2017 第1ステージ

DAZNで日本語実況・解説付でのほぼフルでの放映が実現。

実況担当の木下貴道さんは普段野球の実況などを行っている方で、自転車実況は今回が初めて。そのためにしっかりと勉強をされていた様子で好感が持てますね。

Jsportsの実況でもお馴染みの谷口廣明さんの後輩?にあたる人のようです。

解説は別府始さん別府史之選手のお兄さんで、Jsportsでも解説やナビゲーターでよく見かける方です。

 

 

最近は始さんがナビゲーターをやることが多かったので解説は新鮮。

ただ、丁寧な口調で細かい説明をしてくれるので、初めての人向けにはちょうどいい放送だったと思います。ゼリーが重たい話とか、現場に近い人間ならではの話も面白かったですね。

木下さんも細かいところを色々と質問してくれるので、全体的にとても新鮮な放送でした。

 

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新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 92 吉浦康裕の世界

見てきました。

新文芸座(池袋)で行われた吉浦監督のトークショー&吉浦作品7本連続オールナイト上映。

 

 

最初に日本アニメーター見本市で出品された短編『POWER PLANT No.33』『ヒストリー機関』『機動警察パトレイバーREBOOT』を連続上映。

そのあとに50分程度のトークショー(聞き手:小黒祐一郎)。

そして吉浦監督の自主製作時代の作品『ペイル・コクーン』、商業第一作の『イヴの時間』、『アルモニ』、最後に話題を呼んだ『サカサマのパテマ』ときた。

 

 

最初の2本(『PP33』『ヒストリー機関』)は正直、面白みがなかったが、『パトレイバー』はとても面白かった。パトレイバーはまったく知らないので、登場したキャラクターがオリジナルだと気づいていなかったが、せりふ回しやキャラの造形などクオリティが高く、このまま続編が作られるのであればぜひ見たいという感想を持った。

 

そのあとはトークショー。いろいろ裏話も聞けて、それを踏まえると『PP33』『ヒストリー機関』の奥深さがよくわかってくる。トークショーも含めて面白かった。

 

 

さて、残りの4作品だが、初めて見た『イヴの時間』が、正直期待していなかったのに物凄く面白かった。

とくに最近神林長平の『火星シリーズ』を読んでいるところだったので、この『イヴ』で描かれた「人間とアンドロイドの、その狭間」というテーマがとてもクリティカルに自分の中に入ってきた。

『サカサマのパテマ』もそうだが、こういった、「自分とは違う存在」をはっきりと提示し、しかもその立場が途中で逆転する瞬間を描いていく作品は、激しい印象を自分にもたらしてくれた。

 

『パテマ』は2回目の視聴だったのとオールナイトの最後の上映だったので寝ちゃうかなと思っていたけれどまったく眠くならなかった。やはり面白い。

 

 

改めて吉浦監督というのは、本当に脚本が面白い。世界観が秀逸。良いSFになっている。

『アルモニ』も、細かいところでの伏線の貼り方や、どんな可能性も想像させるラストといった完成度の高さを見せつけてくれた。

 

 

トークショーでの話しぶりでは、2~3年以内に新作、それも長編?が期待できそうな気もするが、もしそれが出てきた場合には真っ先に観たいと思った。

 

 

今回は妻の勧めで正直、気乗りしない形で観に行ったのだが、行ってよかった。とても面白かった。

フレッシュ・ワロンヌ2017

はいはいバルベルデバルベルデ

 

本気を出してからの加速が毎年強すぎる。

最後はかなり早い段階からガッツポーズするほどの余裕が。

年々強くなっているんじゃないか?

 

 

今年はボブ・ユンゲルスが残り20km近くからアタックしたことで、「最後しか見所のない」はずのフレッシュが非常に楽しく見れた。

最終的に残り20~30秒であのタイミングで捕まえられたので、40秒近くタイムギャップがあれば逃げ切りはありうるってとこなのかな。

 

 

2位はダニエル・マーティン。またまた惜しい。

3位はディラン・テウンス。BMC所属の25歳ベルギー人。

「エドワード・トゥーンスと名前が似てるな~」くらいの印象しかなかったのだけれど、今回一気に有名になったね。これからが楽しみである。

そして、一時は先頭に立ったダビド・ゴデュ。

ツール・ド・ラブニール昨年優勝の有望株。20歳のフランス人。

パリ~ニースでもいい走りをしていたが、ここでまた名前を売った。

「激坂に強い」イメージになるのかな。

 

 

フランス人と言えば、ピエール・ラトゥール。

昨年ブエルタ第20ステージの勝利の仕方から、激坂にも強いかなと思っていたけれど14位と悪くない結果に。バルデとほぼ同じタイミングだ。

 

一方でピカチュウことヴュイエルモは26位と微妙・・・アムステルパスしてまできたのに、残念だ。来年は期待できない、かなぁ。

 

 

ベテランも、新鋭も。

純粋でわかりやすいレースだからこそ、それぞれの実力をはっきりと見ることができるこのレース。

今年も非常に面白かった。