DAZNで日本語実況・解説付でのほぼフルでの放映が実現。
実況担当の木下貴道さんは普段野球の実況などを行っている方で、自転車実況は今回が初めて。そのためにしっかりと勉強をされていた様子で好感が持てますね。
Jsportsの実況でもお馴染みの谷口廣明さんの後輩?にあたる人のようです。
解説は別府始さん。別府史之選手のお兄さんで、Jsportsでも解説やナビゲーターでよく見かける方です。
最近は始さんがナビゲーターをやることが多かったので解説は新鮮。
ただ、丁寧な口調で細かい説明をしてくれるので、初めての人向けにはちょうどいい放送だったと思います。ゼリーが重たい話とか、現場に近い人間ならではの話も面白かったですね。
木下さんも細かいところを色々と質問してくれるので、全体的にとても新鮮な放送でした。
レースの展開としては、まず6人の逃げが形成。
- ダニエル・テクレハイマノ(ディメンションデータ)
- チェザーレ・ベネデッティ(ボーラ・ハンスグローエ)
- エウゲルト・ズパ(ウィリエール・トリエスティーナ)
- ミルコ・マエストリ(バルディアーニCSF)
- マルチン・ビアウォヴウォツキ(CCCスプランディポルコヴィツェ)
- パヴェル・ブルット(ガスプロム・ルスヴェロ)
今大会出場しているプロコンチネンタルチームから1人ずつ。
さらに言えばディメンションデータとボーラもちょっと前まではプロコンチネンタルなので、「いかにも」な逃げ集団となりました。
この中でテクレハイマノはエリトリアチャンピオンジャージ(白)。
そしてズパはアルバニアチャンピオンジャージ(赤)。
アルバニアのプロ選手はこのズパだけです。
残り138km地点に最初の4級山岳。
ここで残り3km地点から飛び出したのがベネデッティ。
一度は捕まえられたがさらに飛び出して、無事、先頭通過を果たしました。
2番手はズパ。
ベネデッティは頑張ったのだが、少し力を使い過ぎたのでは・・・?
さらに残り115.8km地点の2番目の4級山岳。
こちらはテクレハイマノが早めに飛び出す。
かつて、2015年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞を獲り、その年のツール・ド・フランスでも1週目を山岳賞ジャージを着たまま終え、確かアフリカ籍としては初めてツールの表彰台に立つことができたということで、かなり注目をされていた選手です。
個人的にも、今回の逃げで山岳賞を獲るとしたらこの人物だ、と思っていたので、ここでの動きは十分に納得のできるものでした。
しかし、ベネデッティは強かった。
テクレハイマノ追走中はさすがに疲れていたのか同じく追いかけるブルットとズパの後ろでかろうじてついていっているように見えたのですが・・・
山頂の直前でベネデッティが猛スピードでテクレハイマノを追い抜く。
そのまま2本目の山頂も先頭通過を果たしました。
さらにテクレハイマノはズパにも抜かれ3番手通過。
テクレさん、完全に足がなくなっていました。
4級山岳は1位通過から順番に3ポイント-2ポイント-1ポイントが与えられており、ここまででベネデッティは6ポイント、ズパは4ポイントとなっています。
最後の4級山岳は残り20.9km。ここで先頭通過してベネデッティが脱落すれば、逆転の可能性もあるのですが・・・
結局、問題なくベネデッティが先頭通過。
これでポイントは9ポイントとなりました。
ちなみにズパは4番手通過でポイントなし。
途中の中間スプリントでも本気の争いをしたために足を完全になくしていたようです。
一方のベネデッティはこの中間スプリント争いにまったく参加をしなかったため、この辺りは戦略の差でしたね。
ちなみにこの中間スプリントポイント。
他のグランツールでは、それこそゴールでのスプリント争いがあるために、正直逃げ集団の中でスプリント争いが繰り広げられることはありません。
しかし、そこはジロ。ジロの敢闘賞は他のグランツールと違いポイント制です。
このポイントの仕組みが複雑なのですが・・・(以下、放送の中で別府さんが説明していたものを参考に)
4級山岳・・・先頭通過のみ1ポイント
中間スプリントポイント・・・先頭から順に5~1ポイント
ゴール・・・先頭から順に6~1ポイント
のようです。
中間スプリントポイントは2つあり、ここの順位によっては、山岳賞以外のジャージを逃げのメンバーが手に入れることができる可能性があるのです。
目を付けたのがテクレハイマノ。山岳賞が取れなかった分をここでぶつけてきました。
1つ目のスプリントポイントはズパに先頭を取られてしまいますが、2つ目のそれで先頭を獲得。見事敢闘賞ジャージの権利を得ました。
後続のメイン集団では、意外にもネイサン・ハースが集団先頭(6位)を2回とも取り、6ポイントを稼ぎ出しました。
ハースがポイント賞を狙うというのは意外ですが、有力スプリンターが途中リタイアすることも多いジロ。とりあえず獲れるときに獲っておくのは戦略としてアリです。
さて、すべての中間スプリント及び山岳ポイントを越え、あとはゴールのスプリント争いです。
集団は最初、ロット・ソウダルの面々が先頭を牽引し、さらに中盤から終盤にかけてはオリカ・スコット、その中でも39歳の超ベテランTTスペシャリストのスヴェイン・タフトが先頭を牽き続けました。ユワンの勝利を狙っての動きでしょう。
さらに残り20km地点あたりからはモビスター、チーム・スカイ辺りが先頭を牽き始め、危険回避の動きが出てきました。
そして、懸命に逃げ続けた逃げのメンバーですが、残り4km地点で、ガヴィリアの勝利を狙うクイックステップ・フロアーズのボブ・ユンゲルスが牽引する集団がこれを飲み込む!
そして残り3km、いよいよクライマックスか、と思われたその瞬間。
なんと、直角カーブがあまりにも狭く、何名かの選手たちがここで詰まってしまいました。
集団は完全に分断。ガヴィリアもこの中で後続に取り残されてしまった可能性が?
モビスターの選手なども多く、これでタイム差がついたとしたら本当にそれが翌日以降に反映されてしまうのでしょうか。
これはさすがに救済が入っても仕方ないと思うのですが・・・
混乱の中、なんとかグライペルやニッツォーロ、ユワンなどの本命は先頭に残ることができ、アシストが少ない中でラスト2kmを迎えようとしていました。
ここで、本日のサプライズ。
ボーラ・ハンスグローエの、サム・ベネットのアシストとして前を牽いていたルーカス・ポストルベルガー(いろんな読み方がありましたが、現地の発音に合わせてこう表記します)。
前を牽いていた彼の後ろに、ぽっかりと空いた隙間。
それがラスト1kmになっても解消されないどころか、むしろ広がっていきました。
ポストルベルガーも、困惑しつつもペダルを踏みこみ、全力でラストを駆け抜けました。
後続も追走への動きはなかったわけではありませんが、いかんせん、アシストが少ない。
また、それこそサム・ベネットへの警戒もあったかもしれません。
結局、集団から5秒近いタイム差を開いて、ポストルベルガーがラストの直線に。
最後はゆったりとガッツポーズを見せるほどの余裕をもってゴールしました。
集団先頭はカレブ・ユワン。
彼の必勝パターンである「先駆け→追随を許さないスプリント」がばっちりと決まり、グライペルをも突き放しました。
でも、彼は勝者ではなかった。
ルーカス・ポストルベルガー。
25歳のオーストリア人。
なんと、ジロでオーストリア人が勝ったのはこれが初とのことです。マリア・ローザ着用ももちろん初。33か国目の快挙だということです。
ポイント賞(マリア・チクラミーノ)、新人賞(マリア・ブランカ)も獲得。
さらに山岳賞(マリア・アッズーラ)もチームメートのベネデッティが獲得したので、この日は本当に、ボーラのための日だったと言っても過言ではありません。
ボーラは今回のジロ、勝利なしでもおかしくないかな、と思っていました・・・すみません。
とはいえ、今回のポストルベルガーが、ただ運が良かっただけとは思えません。
もちろん、あの3km地点のカーブがなければどうなっていたかもわかりませんし、運も大部分を占めるのでしょうが、やはりあの最終局面まで残り、ある程度の牽引をしたうえで、さらに集団を突き放せるだけの走りを見せられた時点で、彼はオーストリア人初の快挙を得るだけの資質があったのです(ちなみにオーストリアロードチャンピオンにも輝いている選手です)。
今年のE3でも上位に入っているという辺り、その資質は間違いのないものでした。
最後の表彰式で別府選手も、「マリア・ローザ・マジック」の話をして、彼が今後大きく成長していく可能性を述べていました。
実際、今後このポストルベルガーという選手が、色々なところで名前を見ることのできる選手になるかもしれません。
個人的にもオーストリア人というのは応援したくなる国ですので、サンウェブのプライドラーともども、健闘してほしいものです。
さて、明日は山岳賞争いもより本格化していくステージ。
ベネデッティがまた、逃げに乗る可能性は十分あります。
個人的にはキャノンデールのピエール・ローラン辺りが頑張ってくれないかなと密かに期待しております。
明日も木下さんと別府さんのコンビが実況開設するとのこと。
・・・話すネタがあるのだろうか。
今日は長丁場で大変でしたが、明日も頑張ってみたいと思います。