行ってきました。
上野の東京都美術館にて。7月2日までやっています。
本当はミュシャ展行く予定だったんだけど、そっちが90分待ちとかいう情報が出回っていて、急遽こっちに。
やっぱり期間の最初と最後のあたりは行くもんじゃないね(ミュシャ展は6月5日まで)。
真ん中くらいの時期が一番いい。
結果、バベルの塔展に来たわけだけど、ミュシャ展行くよりも良かったかもしれない。大好物だった。
ちなみにバベ塔展の方もそれなりの混み具合。本命「バベルの塔」の絵の前は三重くらいの人だかりでベストポジションにつくにはそれなりに待たなければならない。
(時間帯は13時~15時)
さて、バベルの塔展だが、本命のブリューゲル「バベルの塔」はコーナーの一番最後の方にあり、最初は16世紀前半のネーデルラントにおける、イタリア・ルネサンスの影響を受けた写実的な絵画の発展のコーナーから。次に、当時のネーデルラント美術およびブリューゲルに大きな影響を与えたヒエロニムス・ボスの作品と続く。
一番最初が「ネーデルラント彫刻」で、当時の彫刻なんてほとんど見たことがなかったのでこれはこれで新鮮だった。キリストや聖人の像なんだけど、衣服の裾までが丁寧に作られていること、そして基本木彫りなんだけど、彩色することで金属であるかのように見せた、という技術が感嘆モノだった。一部色の残っているモノもあったんだけど、金色とか、本当に金で出来ているように見えた(観覧者の中には「これ金属なんだねー」と勘違いしている人もいたくらい・・・オーク材って書いてあるよ!)
そして、本命「バベルの塔」はもちろん凄かった。
バベルの塔は2種類あって、今回来日しているのは後期の方。よりハイ・スケールで塔自体にフォーカスしたもの。
とにかくリアル。幻想をここまで現実的に描いたのは凄い。大好物。
周辺の風景は当時のネーデルラントを参考にしているようだが、彼がその画業前半で身に着けた風景画や船の造形の経験を取り込んでいる。
そして、レンガや漆喰をクレーンで上層に運び上げるシーンが描かれているのだが、その部分だけ赤かったり白かったり・・・一番上がまだレンガの赤が残っているのに下層の方は古びていたりするなど、「今、まさにこの塔を作っている」という現在性・時間の経過を一枚の絵に見事に表現している。
どれだけ眺めていても飽きない絵である(混雑していたので、ちょっと見たらすぐ離れないといけなかったのは残念だったけれども)
ただバベルの塔は別格だったものの、それ以外ではむしろボスの作品の方に心を惹かれた。
特に印象的だったのが「聖クリストフォロス」。
ボスといえば「樹木人間」に代表されるような奇想的なモンスターの描写で、ブリューゲルもその影響を多分に受けたようだが、この「聖クリストフォロス」は、そこまで奇怪な表現は過剰ではなく絶妙に存在することでより一層絵の不気味さを掻き立てている。
とくに「吊るされた熊」「廃墟の怪物」なんかは、自己主張は弱いけれども、確かな不気味さを見る側に与えてくれる。会場に付された解説もなるほど、と思わせるものだったのでぜひ見てみてほしい。
川を渡る巨人クリストフォロス自体は聖書の話をふまえているだけなので、ボスオリジナルの不思議な存在では決してないはずなのに、この絵の中に含まれると、この巨人の姿ですら奇想なモンスターのように思える。
この、あらざるものへの想像力(あるいは象徴への意識)こそがボスの魅力であり、当時のネーデルラント美術界を魅了したものであり、そしてブリューゲルのバベルの塔へとつながるものだったのだろうと思う。
なお、当美術展では大友克洋による「バベルの塔内部」の絵も展示されていた。
さすが・・・細かい描写を書かせたら当代随一の作家・・・「バベルの塔」とデジタル的に融合させた絵であったが、ほとんど違和感がない。
現実に大きな展示絵に顔を近づけて見てこそ、なので、ぜひ会場に足を運んで観てもらいたい。