12/6(金)〜12/8(日)の2泊3日で京都に旅行してきた記録をメモしていく。
紅葉のピークを少しずらしたことが功を奏し、覚悟していた人混みはほぼなく、落ち着いて回ることができた。
もちろん紅葉も満開というわけではなかったが、それでもまだ里を中心に残っていたし、むしろ敷き詰められた散り紅葉がベストな状態で、十分に楽しむことができた。
3日間の記録を全3回に分けてお送りする。
まずは1日目。
1.京都御苑
まず1日目は、10:30頃に京都駅に着き、ホテルに荷物を送ったうえで、地下鉄で丸太町へ。
そこからまずは京都御苑を散策することにした。(左右ボタンで計8枚の写真)
元は天皇の住む御所の周辺を指す京都御苑。
かつて公家屋敷が立ち並んでいたが、明治に入り天皇が東京に移ったのに従い、公家たちもすべてこの地から立ち去ってしまった。
その後、荒廃するこの地域を憂慮した岩倉具視らが中心となって、公園として整備されていったのが始まりだという。
御苑内には御所や公家の邸宅跡のほか、テニスコートなども用意され、連日賑わっているという。
御苑内には宗像神社や厳島神社などのいくつかの鎮守社が並び、とくに上記画像の3枚目の厳島神社は紅葉との組み合わせがとても映える美しい庭園だった。
園内の銀杏や紅葉はいずれもほぼ散りかけてはいるものの、それでもまだ十分に残っていて、また絨毯のように敷き詰められた散り紅葉が良い味を出している。
満開ならばそれはそれで美しかっただろうが、その時期はきっと芋を洗うほどに雑踏でごった返していただろうし、ちょうど良い時期だったんだと思う。
2.昼食:京やさい和らーめん「いたや」
京都御苑を1時間ほど散策し、乾御門を出て烏丸今出川バス停から本日のメイン目的地「銀閣寺」へと向かう。
203系統のバスに乗って「銀閣寺道」へ。そこから(もはや散り切ってしまい見る影もなくなった)哲学の道を練り歩いてひたすら東へ。
時計の針も12時を指し、そろそろ昼食を・・・と思っていたところ、
突如現れた、謎のラーメン屋。
「京やさい和らーめん いたや」と名乗るその店は、野菜と貝で出汁をとり塩醤油で味付けしたあっさりスープを特徴とする。
京やさい和らーめん いたや - 元田中/ラーメン [食べログ]
そして最大の個性は、その店名にあるように、旬の京野菜をトッピングできるという点。
そのとき出せる京やさいをすべてトッピングした「京都旬やさい和らーめん」に揚げじゃこ菜飯を加えたセットを注文。(上記画像2枚目)
つけ麺(上記画像3枚目)も選べるが、スープもとにかく美味しいので、個人的にはラーメンの方がおススメだ。
野菜はこの日は聖護院かぶの煮たものに、れんこん、水菜、人参の酢の物、そして九条ねぎなどが並ぶ。
とくにかぶがほろほろになるまで柔らかく煮込まれており、九条ねぎもさすがの美味しさ。
スープもスープで最後まで飲みきれるほどのあっさりさを持ち、最後にレンゲですくうとしじみが浮かんできており、これもまた味が残っていて美味しいのでたまらない。
まったく予期していなかったお店であったが、かなりの満足度の高いランチとなり、京都旅行の幸先の良さを感じた。
なお、この店は2019年2月開店ということで、まだ1年も経っていない。
それでいてGoogleの口コミでは33件の口コミがついていていずれも高評価。
それもそのはず、といった味わいであった。紅葉シーズンのピークを過ぎ、平日だったこともあるかもしれないが、それでもお昼時真っ最中にも関わらずまったく人がいないレベルだったのも幸運。
まだまだ穴場かもしれない。今回の旅行でもベストオススメスポットの1つである。
3.銀閣寺(慈照寺)
素晴らしい昼食に巡り会えたことの幸せさを噛み締めながら、いよいよこの日の最大の目的である銀閣寺に。
言わずもがなではあるが、この銀閣寺というのは通称で、正式には慈照寺という。なお、銀閣「寺」というのは寺院全体を指す名称で、かの有名な木造2階建の楼閣建築は観音殿であり、これ単体では「銀閣」と称するのが正確である。中学生のテストでは、寺とつけるとバツがつく可能性すらある。
その東山文化を代表する書院造の美しさもさることながら、その周辺に用意された足利義政の美意識の結晶たる庭園も美しい(と、言いつつ、この庭園が今の形になったのは江戸時代も後期だとか?)。
寺院群をぐるりと囲む小径、高台、竹林などを巡りつつ、京都の実に京都らしい風景の醍醐味を感じ入る。
が、このあと、訪れた事前情報のまったくなかった寺院こそ、この日最大の感動を得られる場所であった。
4.圓光寺
自分の旅行好きは別に元より自分自身の中にあったものではなく、また旅行といっても自ら計画を立てることは稀である。
そのほとんどを妻に任せており、それは申し訳ないと思いつつ、彼女の旅先選びはかなり成功率が高いので、いつも助かっている。
今回もそうだ。自分なんかはろくに調べもせずミーハーに「銀閣寺とかいいよね。見てみたいよね」という気分で銀閣を最初に選んだが、そのあと妻が選んだのがこの圓光寺であった。
圓光寺?何それ?知らん・・・という自分なんかは不安を抱いたものの、ここはこの時期の「散り紅葉」においては非常に評判の高い寺院であったようだ。
それがこれである。
絨毯のように敷き詰められた散り紅葉。
それ以外にも、至る所に「終わりゆく秋」となおも生命力を宿す鮮やかな落葉たちに出会い、歴史の重みとはまた違った自然の叡智を感じ取った。
自然以外にもこの寺院には見所がある。
入り口付近の枯山水庭園「奔龍庭(上記2枚目)」や、日本画家・渡辺章雄の手による「琳派」を意識した襖絵(上記4枚目)も眼を瞠る美しさで、ぜひ生で見てもらいたい。
そして高台には、徳川家康の墓(上記6枚目)が・・・元々この寺は、徳川家康が開いた学問所が原型となっている。そのことを踏まえての遺構であろう。
歴史とは、必ずしも古ければ良いわけではない。
自然だけがすべて良いわけではない。
そんなことを感じさせながら、京都の知らなかった魅力を存分に堪能させてくれた、個人的な「穴場」であった。
とにかく散り紅葉が美しかったので、この時期に来ることを強くお勧めする。
5.夕食:嵐山「らんざん」
さて、圓光寺を巡り終わって、時間は15時を過ぎたところ。
そろそろ頃合いも良くなってきたところで、足の疲れも感じ、旅館に向かうことにした。
こちらも妻が選んでくれた旅館は、嵐山の渡月橋のすぐ傍にある旅館「らんざん」。
銀閣・圓光寺のある東山エリアからは見事に正反対の位置。バスを乗り継いで、1時間近くかけて嵐山に到着した。
嵐山駅前はいかにも観光地といった賑わいを見せており、とくに渡月橋周辺は人力車の呼び込みも華やかな一大観光スポットとなっていた。
そんな雑踏をいそいそと掻き分けながら、目的地の旅館に辿り着く。
夕食は18時に設定し、しばらく部屋で休んだあと、いよいよ食堂に向かう。
前菜(上記2枚目)がいきなり美しい。
そのどれもが、完成された美味を誇っていた。
右上は鰆の幽庵焼き、その下に柿麩と焼栗。柿麩? 初めて聞いたが、その食感はとても柔らかく、中には確かにクリーム状になった柿が入っていた。
左の箱の中には秋刀魚小袖寿司に蓮根チップ、鴨ロース、赤蒟蒻、そして薩摩芋クリームチーズ和え。
・・・今回の夕食二日分の中でも、このときの前菜が最もその「完成度」が高かった気がする。
この瞬間、この旅館に惚れ込んだ。実は温泉でなかったり、旅館自体の質はこれまで経験したものと比べ最上位にいるわけではないが、しかし宿泊地における食というのは非常に重要だ。
この旅館は記憶に残すだけの価値がある。それをまずこの最初の前菜で確信することができた。
続いてお造り(3枚目)は間八に鯛、京都らしい黒胡麻麩。
とくに変哲もないお造りだったが、山の中にも関わらず、脂も乗って実に申し分のない味だった。
メインディッシュのおろし鶏鍋(4枚目)に口直しの蕎麦米饅頭(5枚目)を挟んで鰊煮(6枚目)が最後に登場。
鶏鍋は葱と丹波しめじがいちいち美味しく、煮物では主役の鰊もさることながら、秋茄子が味も沁みていて絶品であった。
もちろん京都らしい巻湯葉も満足のいく代物。このあと来た御飯についていた漬物もこれまで食べた漬物の中で一番と思えるような味わいで、漬物が好きでなくいつも残している妻も、絶賛しながら完食するほどであった。
とにかく野菜だとか漬物だとか魚だとか、素朴なもののクオリティが高い京都料理。
変なものを選んでしまうと味気なく寂しい体験もしてしまいがちかもしれないが、今回のこの旅館は大成功と言って差し支えのないものであった。
なお、本日のお酒は、地ビールと純米大吟醸の地酒、それから地元の梅酒をロックで頂いた。
酒の味が分かるわけではないが、旅行した際にその土地の酒は必ず飲んで帰る。それが酒の味が分からない者にとって、最も贅沢な酒の楽しみ方だと思っているから。
そんな中、思いもかけぬ出会いをするものである。私にとってそれは、山口の獺祭であり、青森の田酒であり、石川の加賀梅酒であった。
今回の京都の酒は十分に美味しかったが、その意味で今後も強く記憶に留めたいと思うほどではなかったかもしれない・・・。
何はともあれ、十分に満足のいく夕食を終え、このあとは風呂に入り早めの就寝。
翌日は天龍寺や亀岡〜嵐山の保津川下り、トロッコ列車などをメーンイベントとしていく。