らいたーずのーと2

旅行、自転車、現代美術、食、歴史、文学、哲学など雑多に綴る。

令和元年12月 京都旅行記 第二日「念仏寺、仁和寺、金閣寺、下鴨神社」

 

京都旅行記もいよいよ最終日。

本日は仁和寺、金閣寺といった有名所を押さえていく日。

名残惜しいが、最後の最後まで全力で楽しもう。

 

 

1.愛宕念仏寺、化野念仏寺

最終日の最初の目的地は、市内北西部に位置する2つの念仏寺、「愛宕(おたぎ)念仏寺」と「化野(あだしの)念仏寺」である。

旅館近くのバス停からバスに乗り、「愛宕寺前」で下車し、その後は徒歩で巡った。

 

愛宕念仏寺は別名「千二百羅漢の寺」と称される。歴史は古く8世紀にまで遡るが、この寺の特徴はその歴史の古さでもその当時から残る遺構でもない。

荒れに荒れたこの寺を復興させるべく、呼びかけられて始まった素人参拝客たちによる「羅漢彫り」。1981年から10年間で、実に1,200体もの羅漢像が彫り上げられた。

 

しかし、羅漢と言いつつ、その内実は様々。赤子を抱いたもの、猫を抱いたものはまだしも、ギターを抱いたもの、バットを手にするもの、リーゼント(!)、モアイ(!?)・・・個性豊か、という言葉では片付けられないほどにフリーダム。なんか両手を広げてお金を欲しがるような仕草を見せる生臭坊主までいて、こんなものを許す寺院側の度量の大きさを思い知る。

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しかし、ある意味でこれこそが、民衆と交わる寺院のあるべき姿なのかもしれない。

高尚な思想、作法、流儀にもとらわれることなく、人びとがその手で思いを込めてそれぞれの「羅漢」を掘り、それがまた後に来る人を楽しませ、笑わせ、小さな幸せを与える。

 

信仰というものの新しい姿を垣間見ることのできるこの愛宕念仏寺。

あまりメジャーではないのかもしれないが、ぜひおススメしたいスポットである。

 

 

愛宕念仏寺を後にして、そのまま徒歩で山を下る。バス停1つ分下れば、もう1つの念仏寺、化野念仏寺に辿り着く。

 

ユーモアに溢れていた愛宕念仏寺と違って、こっちはややシリアスな世界。

平安時代以来の墓地で、化野に散在していた無縁仏の数々を掘り起こし、境内に約8,000体の石仏・石塔が建てられたというこの寺院には、常に静けさと厳粛さに満ちていた。

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愛宕念仏寺、化野念仏寺。

それぞれ、方向性は違いながらも、共通しているのは一般の名もなき人びとの強く切実なる「思い」。

その思いを噛み締めながら時を過ごし、やがて最終日最大の目的地へと向かっていく。

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2.仁和寺

化野念仏寺から歩いて嵐山電鉄嵐山駅へ。

駅から改札を通らずにちょうど来ていた車両に飛び込む。全線統一料金で、降りたところの改札で支払う仕組みらしい。

四条大宮駅の電車を帷子ノ辻(かたびらのつじ)駅で北野白梅町行きに乗り換えて、御室仁和寺駅へ。降りれば目の前にはすぐ、仁和寺の正門が待ち構えている。

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仁和寺と言えば仁和寺なる法師・・・で始まる徒然草の一節がすぐ思い浮かぶ。しかしよく考えればあれは石清水八幡宮に参る(参らない)話であり、直接の関係はない。むしろ仁和寺の評判を下げかねない一節で・・・と思っていたが、全く知らなかったこの仁和寺、実に回りがいのあるスポットだった。

 

ちょうど、観音堂の特別公開の最終日だった。6年に及んだ保存修理事業が昨年に完了し、それを記念して今日まで、普段は一般公開されない観音堂の中身が公開されたというのだ。

お堂の中には迫力ある千手観音像、二十八部衆立像、風神雷神像など・・・

風神の指が四本しかないのは東西南北の空間の支配を意味し、雷神の指が三本しかないのは過去現在未来の時間の支配を意味するとか初めて聞いた内容だった。

 

そして、この立像群の裏側には江戸時代に描かれたそのままの壁画が。こちらは一切手を加えていないというが、時代を感じさせない鮮やかな配色で、天道人道修羅畜生餓鬼地獄の六道を表現した迫力ある壁画など、あの時代の人びとの情念を身近に感じ取れるような、そんな思いを抱くことができた。

そして、この特別公開に合わせて販売されているという、千手観音の描かれた箱に入った限定のお香を購入。

ちょうど真言宗ということもあり、この秋に仏門に入った父への、ちょうど良い御土産となった。

 

 

仁和寺は他にも見るべきところは多数あった。冬に咲く桜、五重の塔、御殿の庭に敷き詰められた散り紅葉など・・・。

 

御殿にはほかにも襖絵や厳かな霊明殿、そして五重塔南方に位置する霊宝館には、国宝・重要文化財の阿弥陀如来及び多聞天・吉祥天らの像、さらには織田信長の朱印状などもあり、これらの見所全てを回っているうちに平気で1時間半から2時間ほどを消化してしまった。

 

本当は仁和寺はさらっと見て回るつもりで、このあとは龍安寺と金閣を回る予定だったが・・・

 

時間がなくなりつつあるため、予定を変更し、今回は龍安寺を諦めることにした。

 

 

3.昼食と金閣寺

仁和寺を後にして、最終日の昼食に選んだのは仁和寺から徒歩5分のところにあるフランス家庭料理「ブラッスリーせき」。

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元々は近くの蕎麦屋に入ろうと思っていたが、そこが残念ながらお休みしており、「肉を食べたい」という自分の希望に応える形でこちらに。

ランチにしては高いが、その分味は文句なし。

おそらく夫婦が経営するこじんまりとしたお店で、夜は完全予約制だが、ランチはこのクオリティならむしろ安いと感じさせるほど。

カリフラワーのポタージュや牛フィレステーキを頂いた。

 

車を運転しない今回の旅行は、昼から酒を飲める数少ないチャンス。

にも関わらず1日目も2日目も酒と共に食べる風なランチではなかったので、この日は遠慮なくグラスワインを。

やはり昼間の酒は至高である。

 

 

少し豪華な昼食を終え、いよいよ3日間の旅もクライマックス。

京都観光の定番、金閣寺へと向かう。

 

修学旅行のときも来ていたはずだが正直よく覚えていない。だが、当時は「銀閣の方が渋くて分かってる人はわかる魅力さ」とやや中2病が入っていたが、あえて今、金閣を見るとその凄さがよく分かる。

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金ピカの寺という、それだけみれば成金趣味の・・と思わなくもないデザインだが、実際に現地で見ると、その周辺の風景の雄大さに恐れ入る。

池も、庭も、すべて、銀閣の数段上をいく規模であり、その雄大さの中に置かれているからこそ、この絢爛なる寺院も見事に溶け込んでいるのだ。

人智の限りを尽くした建造物や造園が、自然の中にいとも簡単に飲み込まれる様。

金をかけた先だからこそ見える自然礼賛の境地を、生で見たこの「金閣寺」で発見した。

さすが室町最強の将軍。

 

 

ただ、金閣寺は金閣こそ凄いものの、それ以外は(もちろん庭園も素晴らしいものの)長居するほどのものは多くなかった。

観光客がやはり多すぎたというのもあるかもしれないが、ここまでの寺院たちと比べると割合早々と抜けてしまった。

 

さりとて、見るべきものが多いであろう龍安寺に行くほどの時間もない。

最後の訪問地は、駅へと向かう途上にある下鴨神社にすることに決めた。

 

 

4.下鴨神社

今回の旅の14番目の訪問地にして最後の訪問地は、Twitterでも紅葉シーズンのオススメスポットとして紹介された下鴨神社。

正式名称は賀茂御祖(かもみおや)神社であるが、鴨川の下流に位置するためこの名で呼ばれるのが通例となっている。

今回の旅では寺参りが主だったため、最後の最後で神社に参るというのはまた新鮮な感じがした。

真っ赤に染まった紅葉と、紅の鳥居とのコンビネーションは実に印象的だ。

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最後は紅葉の残る下鴨神社の参道「糺の森」を抜けながら帰路へ。

アクセサリーや小物を売る露店が立ち並んでいる通りも、16時を回り皆、店仕舞いの雰囲気。

その感じがどこか寂しく映りながらも、3日間の旅の終幕を彩るうえではぴったりだったかもしれない。

 

 

かくして、旅の終わり。

この3日間は、事前に危惧していた混雑にほとんど出会うことのない奇跡のような3日間だった。

やはり紅葉シーズンはほぼ終わりかけ、かといって冬のライトアップなどもまだ始まらないという中途半端な時期だったことが功を奏した。

最高の状態の紅葉には出会えなかっただろうが、それでも十分に美しかったし、それで大混雑を避けられるのであれば儲けものである。

混雑が嫌いな人にとっては、この時期は、穴場と言える時期かもしれない。

 

はてさて、次の旅はどこへ向かうか。

静岡の三保の松原、島根の石見銀山、あるいは九州など・・・行ったことない名勝・土地をめぐってみたい。